もみじの日記

観劇の記憶を残しておく場所

「BANANA FISH」 The Stage -後編-

 この記事はバナステ中止に際して、わたしがどうにもならない想いを吐き出すために書いているものです。支離滅裂だし、激重の文章です。そこだけご注意ください。

 

 

突然の公演中止のお知らせ

 1月24日に開幕した『「BANANAFISH」The Stage -後編-』

 公式から正式に発表があった。

 

 2/1以降、全公演を中止。ついに来てしまったかって思った。他の作品だったり日々の感染者数だったりを見て、ずっとドキドキしていた。でも、バナステはきっと駆け抜けられる。そう願った。そして、叶わなかった。

 一番悔しいのは当たり前だけど、カンパニーのみなさんだろう。稽古中だってきっと細心の注意をはらっていただろうし、なんども検査だってしたのだろう。途中悔しくもも中止になってしまった公演もあったが、こんなところで終わってたまるかとばかりに、わずかな時間で立て直して公演を再開した。その対応力に驚かされたのもつい数日前のことだ。まさに七転び八起き。だったのに。前編に出演されていたキャストさんの想いも背負って、アッシュと英二の物語を最後まで届けようと奮闘していたのに。現実はこんなにも残酷だ。

 公演関係者1名にコロナ陽性者が確認された。もちろんその方に落ち度は何もない。関係者としてたくさん対策をしてくれていただろう。それでも罹ってしまうのがコロナなのだろう。オミクロン株なのだろう。憎むべきはコロナであって誰も悪くない。それは分かってる。とても。でも、だからこそわたしはつらいし苦しい。上手く言葉にできないけど。このやり場のない気持ちをどうにかしたくて、わたしは今この文章を書いている。

 わたしは2/1マチネのチケットを持っていた。服装もメイクも考えて、楽しみだなーって思いながらゲネ動画を観たのはほんの半日前のこと。それなのに、どうして。この状況の中ですでに2公演も劇場で観劇できていたわたしはきっと幸せ者なのだろう。でも、やっぱりつらいものはつらい。公演中止によってチケットがただの紙切れになってしまうのを経験するのは久しぶりだ。パライソ2020以来か。パライソ2020はおそらく日本の演劇でコロナの影響を一番に受けた演目の一つで、それ以来わたしが観劇する公演で同じ事が起きていなかったのは幸運だったのかもしれない。

 「毎公演、千秋楽という気持ちで」コロナ禍になってからよく聞くようになった言葉だ。これって演じる側は相当しんどいだろうなって思う。わたしはそちら側に立ったことはないからもちろん分からないけど。だって、今までは公演するに当たって演者さんが考えるのはもちろんお芝居のことが中心だっただろう。それがお仕事なんだから、それはそうなんだけど。でも今はそれに加え感染症対策をして検査をして、それでも中止になるかもしれないという不安も抱えて。他作品の円盤でコロナ禍のバクステも見たけど、やっぱり俳優さんは不安だってこぼしている。必死に稽古をして作り上げた作品がこんなにもあっけなく中止になってしまう。急に千秋楽を迎えてしまう。劇場に行けなくなる。こんなにも苦しいことある???

 もうずっと思い続けている。役者さんに、カンパニーのみなさんに、素晴らしい物語を届けてくれたことへ、大きな歓声を送りたい。最高だった!!って、マスクに隠されない笑顔を見せて、ちゃんと声を上げたい。これが叶うのは一体いつのことになるのか。

 

BANANAFISHという愛の物語

 BANANAFISHの世界にいると、毎日いろんな色や形の愛を感じる」

 1/27マチネのカテコでのくるむくんの言葉だ。この言葉を聞いて、なるほどたしかにと思った。漫画やアニメを見られていないから、まだ舞台での出来事しかわたしは知らないけど、こんなにも愛に溢れた作品、なかなかないのでは。

 日本から来た純粋無垢な青年に安らぎを感じ、彼を危険に巻き込むまいと遠ざけようとした。それが難しいと分かってからはなるたけ危険な目に遭わないよう側におこうとした。犯罪者にはするまいと距離を置き、手紙を読んで駆けつけようとして、でも叶わず、その面影を探して図書館に辿り着いた。

 NYに来て、日本ではそうない過去を持った青年と出会い、その傷に寄り添った。どんなに血生臭く恐ろしい場面に出くわしても逃げ出さず、恐ろしいかと問われれば「まさか!」と答え笑顔を見せた。いつだってその温かい手で彼を包み込んだ。日本に帰るときには想いをこめた手紙をしたためた。

 言うまでもない、アッシュと英二のことだ。いつだってお互いがお互いを想いあっていた。

 良き友人として一緒にいたショーターも、ボスとしてアッシュを慕い、英二を護ったアレックス・コング・ボーンズ・スキップをはじめとするリンクスのメンバーも。怪我で棒高跳びを諦めた英二をNYに引っ張りだし、それに責任を感じつつも英二を見守り続ける伊部さんも、アッシュの父さん役として寄り添い続けたマックスも。ボスであるショーターを慕い、その死の真相を知ってからは「ボス」という役割に苦悩しつつ奮闘し、最後に優しい嘘をついたシンも、そんなシンのことを大事に思っていたが故にあの行動に出たラオも。教え子の現在を見て最終的には力を貸したブランカも、アッシュにゆがんだ執着を抱いた月龍も。あらゆるワザを仕込んで養子に迎え、最後の最後にその命を守ったゴルツィネも、一種の愛なのだろう。上げだしたらキリがない。

 こんなにもたくさんの愛に溢れた物語、わたしは他に知らないかもしれない。BANANAFISHがアニメ化されたとき、TwitterのTLの様子を見てBLアニメだと判断してしまったわたしは、少しこの物語を敬遠していた。それがどうだろう。BLだなんてとんでもない、というのがわたしの中での結論だ。この作品に出会えて良かったと思う。推しがこの舞台に出演するとならなければ、一生この物語を知らないままだったと思う。知れてよかった。

 

おわり

 改めて、この大変な状況の中、この作品を届けてくれたことに特大級の感謝を。まさかキャストさんがこの文章を読んでくれるなんてことは絶対ないと思うけど、あなたたちが染め上げた黄色い世界にこんなにも魅了されてしまったオタクがいるんですよってことだけだれかに届いたらいいな。そして、叶うことならばいつの日か、状況が落ち着いたら今度こそは千秋楽を迎えてほしい。こんなにもあっけない、急な千秋楽なんてこの物語には似合わないとわたしは思う。ちゃんと銘打った千秋楽の日に、素晴らしい物語を届けてくれてありがとうって、スタンディングオベーションを贈りたい。叶うことならば、それを実現させてほしい。お願いします偉い人。いつかまた、劇場で、黄色く染まった世界に浸らせてください。

 

 最後に、コロナに罹患された方の一刻も早い回復をお祈りいたします。そのほかのカンパニーのみなさんもどうか健康でありますように。

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1/27 ステラボール入口にて